テーブルの上のものを食べてしまう犬

「ウチの犬はおバカさんですが、直るでしょうか?」と飼い主さんから相談を受けました。

最近では、「犬のしつけは飼い主さんの責任で、悪いのは犬ではなく飼い主さん」という考え方がかなり浸透してきたと思つていましたが、いまだに「ウチの犬はおバカさんです」と言う飼い主さんが多いことに驚きを感じます。あなたの愛犬は、本当に「おバカさん」なのでしょうか?

この飼い主さんがいちばん困っていたのは、『パフィー』がテーブルの上にあるものを盗み食いすることでした。イングリッシュ・コッカー・スパニエルがダイニングテーブルに飛び乗るところを想像して、その身体能力に感心していたところ、直接飛び乗るのではなくて、イスに飛び乗ってからするりと上手にすき間からテーブルまでたどり着くのだそうです。そんなことができる犬を、なぜ「おバカさん」と呼ぶのでしょう?

ダイニングルームを見ると、すべてのイスはテーブルから離されて壁際に並べられ、テーブルだけがポツンと真ん中にありました。テーブルに乗られないように、飼い主さんもそれなりに知恵を使っているようです。

ある日、飼い主さんがダイニングテーブルで昼ごはんを食べていると、飼い主さんから見える位置で、パフィが隣のリビングルームにあるコーヒーテーブルの角をかじり始めたそうです。「やめなさい!」と言ってもやめないので、飼い主さんはコーヒーテーブルのほうへ。するとパフィーはダッシュでダイニングテーブルヘと向かい、するりとイスからテーブルヘ上って、飼い主さんの昼ごはんのメンチカツをひと口でペロリと平らげたそうです。おバカさんどころか、何とも賢いじゃありませんか!

まさにそのコーヒーテーブルで、お茶を飲みながら話をひと通り聞いた後、パフィーのハウスをチェックするために部屋を出ると……。後ろから「コボゴボ、ゴボゴボ」とお茶を飲む音が聞こえてきました。

「あっ!」と顔を見合わせる飼い主さんと私。時すでに遅し。振り返ると、パフィーが私のお茶の残りをおいしそうに飲んでいました。その飲みっぷりから、おそらく初犯ではなさそうです。どうやらこの場面でマヌケでおバカさんだったのは、パフィーの行動を予測できなかったダメトレーナー(つまり私)のようですね。

賢い犬と付き合うのは、じつは簡単なことではありません。「賢い犬=おりこうな犬」ではありません。一般的には、「おりこうな犬=何もしない犬」とされていることが多いように感じます。「いたずらをする犬=悪い犬」なのでしょうが、「いたずらをする犬=作業意欲が高い犬=仕込めばすばらしい仕事をしてくれる犬」とも言えるのです。

賢い犬は、飼い主さんにとって不都合な行動もすばやく覚えてしまうので、飼い主さんは自らの行動に十分気を付けなくてはなりません。

 

大型犬の飛びつき

飼い主さんのお悩みは、『ターシャ』の飛びつき。

詳しく伺ってみると、すべてのお客さまに飛びつくというわけではなく、飛びつかれる人と飛びつかれない人がいるそうです。

飛びつかれないのは大型犬を飼っている人で、厳しく『NO!』と言うのでターシヤも飛びつかないほうがいいと学習しているのだそうです。私がお宅へ伺ってみると、飛びつかれまくりました。どうしても喜んでしまう、ダメトレーナーです(笑)。

飛びつきに関しては、良いのか悪いのか判断が難しくなる出来事がありました。2008年に行われたJAPDTのカンファレンスで、災害救助犬のデモンストレーションを見たときのことです。犬たちのすばらしいパフォーマンスが成功した後、先生は必ず大げさにほめ、犬たちはうれしそうに前足を先生の体にかけ、なでてもらっていました。

その場面を見て、犬たちが先生をバカにしているように見えた人はひとりもいないでしょう。ただこの場合には、「指示することで必ずやめさせることができる」という条件があります。

飼い主さんの指示に確実に従わせることが必要なので、まずベースプログラムに取り組んでもらいました。

ターシャに飛びつかれたときは腕を組んですばやく背中を向け、陽気なターシャにちゃんと伝わるように、本気かつキレのある動きで拒否するようお願いしました。笑顔も見せてはいけません。

4週間後、私はターシャに会いにいきました。玄関に入ると、ターシャが飛んできましたが私の前まで来て座り、モソモソしながら私の顔を見ています。飼い主さんはオスワリーマテの指示を出し続けています。私も必死で目をそらし、がんばっているターシャを刺激しないようゆっくりと動き、部屋の奥のソファまで移動しました。ターシャはうれしそうにしっぽを振りながら私についてきましたが、私が座るとモジモジしながら隣に座りました。その様子を見届けて、私はターシャに初めて言葉をかけました。

「こんにちは、ターシャ」と静かに声をかけ、ゆっくり2回ほど胸のところをなでてやりました。ターシャはそれで気が済んだようで、くるっと振り返りお気に入りのクッションの上に寝そべりこちらをながめていました。飛びつくのもかわいいですが、そんな風に優雅に振る舞うターシャの姿もとても愛らしいものです。

飛びつきをやめさせるには、飼い主がコントロールできるようトレーニングすることと、対象が他人の場合には、「飛びつかれる人がちゃんと拒否してくれる」という協力も大事です。そうなると、お散歩のときに近づいてくる「自称犬好きさん」は、手ごわい天敵です。

「あら、かわいいわね~」などと言って飛びつかせてくれて、なでたり、優しい声をかけてくれたりして「飛びついたこと」に対してのごほうびをくれるので、犬はそのごほうびが欲しくて行動を繰り返してしまいます。

そんなとき、犬好きさんは必ず「私、犬好きだから大丈夫よ」とおっしゃいますが、それは違います。

大丈夫なわけはありません。そんな学習をさせられて、飼い主さんは困っているのです。私も含めた全国の「犬好き」のみなさま、人なつこくて愛想の良い、かわいいワンちゃんに出会ってしまい、さわりたい衝動にかられてしまったら、必ず飼い主さんに「飛びつかれてもいいですか?」って、聞いてからにしてください。

飼い主さんのがんばりもあり、ターシャの飛びつきは、今ではだいぶ良くなったそうです。100%飛びつかないということではないそうですが、飼い主さんが受け入れられる範囲とのことですから、良かったと言っていいでしょう。

 

お客さんに飛びついてしまう犬

お客さんに飛びついてしまう、ということでご相談がありました。

フォックスニアリアはとてもエネルギーがあり、スイッチが入ると興奮してしまう傾向が強い犬種です。そのエネルギーこそが彼らの魅力で、私は大好きなのですが、コントロールできないと大変なことになりかねません。

期待通り『アニー』は私の訪問をとても喜び、飛びついてペロペロなめてくれました。私も喜んでいるのが伝わるので、やめる気配はまったくありません。

そんなアニーですが、何と飼い主さんには飛びつかないというのです。飼い主さんはおとなしそうな方でしたので、とてもアニーをコントロールできるようには見えませんでした。どうやって飛びつかないようにしているのか尋ねると、「本気で叱る」とのこと。

もし、爪がセーターに引っかかってしまったらどんなに大変かと心配すると、本気で叱ってしまうのだそうです。よほどお高いセーターをお召しなのかと思っていると、飼い主さんは「だって、アニーの爪が折れてしまったらどうしましょうと思って」と。

フォックスーテリアの爪にセーターが勝つ?ということでしょうか。それはあり得ない……と言いいかけて、やめました。私の経験では、「犬の爪VSセーター」ですと、セーターから糸が出てしまうこと圧倒的に多い(というかすべて?)かと思うのですが、その気持ちが飼い主さんの本気を引き出すことに役立っているのであれば、そう思い続けていただくのも悪くありません。伝えなかったからといって、飼い主さんの生活に支障をきたすものでもありませんしね。

逆に「すごい迫力で叱つてるんですけどやめないんです」という飼い主さんもいます。

実際はそのほうが多いかと思いますが、犬がやめないのなら、「その犬にとって、ある行動をやめたくなるほどすごい迫力じゃない」と考えるべきでしょう。動物は、本当に嫌なことが起きたらその行動をやめるものです。

やめるほど嫌ではなかったら繰り返しますし、うれしいことが起きたら何度も繰り返します。それが犬が学習する仕組みなのです。

アニーの飛びつきですが、飼い主さん本人に対してはやめさせることができているので、あとは他人に対するときも遠慮せずに叱ればやめてくれるはずです。さすがにお客さまの前ではできないということで、飛びつくかわりに、どうすればもっと良いことが起きるかを教えることにしました。

まず、飼い主さんのアニーに対するコントロールカを上げるために、ベースプログラムに取り組んでもらいました。アニーがお客さまに飛びつこうとしたら「オスワリ」の指示を出し、従ったら「とっておきの」おやつを与えるようアドバイスしました。従わなかったら、淡々と捕まえて八ウスに戻すようにお願いしました。

アニーは明るく素直な性質&食いしん坊でしたので、トレーニングはうまくいきました。

お客さまが来るとおやつがもらえると学習してうれしそうに「オスワリ」をするようになったそうですが、いちばん好きな実家のお母さんにはどうしても飛びついてしまうそうです。お母さんもうれしそうだとのことでした。

それを聞いて密かに、今度伺ったときには「飛びつかれたい!」と思ってしまったダメトレーナーの私でありました(笑)。

 

犬の飛びつきにはコントロールが必要

わが家の犬たちは、飛びつきます。

私は飛びつかれるのが好きなので、わが家では飛びつきOKなのです。家に帰ったとき、うれしくてキュンキュンと声を出しながら飛びつかれると、疲れも一気に吹き飛んでしまいます。

「犬が飛びつくのは、相手をバカにしている行為だからやめさせるべき」という説もあるようですが、今まで10年間、1500頭以上の犬たちを観察してきて、ほぼ90%以上はうれしくて飛びついているように見えます。

たまに「今のはわざと押したな……」と思うこともありますが、犬同士遊んでいるときも同じようなことをするので、悪気はないのではないでしょうか。

だからと言って、すべての犬において飛びつきが許されるわけではありません。大型犬は、小さい子どもやお年寄りを押し倒してケガをさせてしまう可能性がありますし、噛みつく犬に飛びつかせるのは非常に危険です。

実際、東京都心部のあるお宅で飼われていたオーストラリアン・キャトルドッグが、家に遊びに来たお子さんの友だちに(うれしくて)飛びついて転ばせ、頭にケガを負わせてしまったことがありました。ケガをしてしまった子は「犬は悪くない」と犬をかばったそうですが、ご両親はかなり怒ってしまい、キャトルドッグは四国のブリーダーさんに戻されることになってしまいました。私がレッスンを始めたばかりの出来事でした。

今回の判断が正しかったのかどうかはいささか疑問ですが、都会でキャトルドッグを飼うには、それなりの努力が必要なのだと思います。もっと幼いうちからしっかりとオビディエンス(服従)のトレーニングをする、子供に飛びつけない環境管理を徹底するなどが重要でしょう。

またブリーダーさんも、引き渡し先の環境などをよく考えていただきたいと思います。

大好きな近所のおばさんに飛びついたダルメシアンの牙が、たまたま顔に当たって出血してしまったケースもありました。大型犬は、ただ寄りかかっただけでも体重がかかるので、その気がなくてもケガをさせてしまうことがあります。

人との接触には十分気を付けるべきですし、コントロールできるようにトレーニングしておく必要があるのです。

 

ドッグカフェにて

私は、ドックカフェがあまり好きではありません。見たくないものを見てしまうことがあるからです。

ロックを飼い始めた14年前はまだドックカフェが珍しかったので、4歳半の『ロック』と3歳の『コタロー』を連れて行ったことがあります。連れて行くにあたり、家での夕食時にテーブルの下で4時間待てるようにトレーニングをしました。4時間ともなると犬たちは寝ているのですが、いま考えると、そんなことしなくてもよかったなと思います。

ある日、付き合いでドックカフェに行ったときのこと。ふと隣のテーブルを見ると、何と、チワワがテーブルの上に丸まって寝ているではありませんか!

飼い主は携帯電話に夢中になっていて、お店の人は注意しにくそうで、見て見ぬふりをしているようでした。私は思わず「ちょっと、それダメ!」と叫んでしまいました。

そのカフェは、とくに「ドックカフェ」と看板を掲げているところではなく、お行儀の良いワンちゃんはどうぞ、というドックフレンドリーなカフェだったので、何だかとても腹が立ってしまったのです。

マナーを守らない飼い主さんのせいで、すてきなドックフレンドリー・カフェが減ってしまっているのは事実です。最近では撮影禁止、ブ囗グで紹介するのもNG、というカフェも増えているそうです。「そういった日記を見て、こぞってやってくる飼い主さんたちのマナーは、えてして悪いことが多いからだ」と、カフェの店長が困り顔で話してくれました。

幸い、私が注意した飼い主さんはすぐに犬を降ろして「すみません」と謝ってくれました。注意するほうも決して気分がいいわけではないので、飼い主さんの言葉には救われました。でも、なかには注意されたら逆ギレする!なんていうどんでもない「モンスター飼い主さん」もいるようです。飼い主の問題以前に、人としてのモラルの問題ですね。

また、K9ゲームのトレーニング後、チームメイト6名と犬6頭でトップカフェに立ち寄ったときのことです。私たちは犬たちをテーブル、またはイスの下に伏せさせて待たせていました。するとそこへ、向かいの席に座っていたチワワの飼い主さんが、「あらあら、そっちへ行っちゃダメよ!」と、どんどんチワワを近づけてくるのです。「行っちゃダメ」と言っているものの、リードを持っているのは飼い主さんです。チワワに引きずられるって、どれだけ力持ちのチワワなのでしょうか。

どう考えても、ぽっちゃり体型のおばさまを引っ張れるほどの力はチワワにはありません。それでもメタボばあやは「チワワ王子」に引きずられ、我々のテーブルに無事到着。王子が、がんばってじっとしている犬たち全頭のニオイを嗅いで悠々とお席にお戻りになるまで、しっかりとお供したのでありました……。

もちろん、K9ゲーマー犬たちはどの犬も動くことなく、無事、王子の襲撃(?)に耐えました。パチパチパチ!

こんなこともありました。2頭のチワワとカフェトレーニングをしていたときのことです。テーブルの下でお行儀よくフセをして待っている2頭を見つけて、ノーリードのチワワがうろうろと近づいてきました。飼い主さんはやはり「そっちへ行っちやダメよ」と(従うはずもない)指示を出しますが、自分たちはテーブルに座ったままです。

チワワ王子が勝手にニオイを嗅ぐあいだ、必死で「フセでマテ」をキープしようどする、やんちゃ盛りのチワワたち。飼い主の指示に必死で我慢しながら、無事襲撃に耐えました。パチパチパチ!

呼んでも戻るわけがないのは、チワワの飼い主さんも重々承知しているのでしょう。しばらくして、やっと犬を迎えにきて白分たちのテーブルに連れ帰り、「○○ちゃんも『オスワリ』しなさいね。はい、『オスワリ』。あら?『オスワリ』は?も~、おバカさんね~」。って、おバカさんはどちらでしょうか……。

「オスワリ」もさせられないのなら、カフェに連れて来てはいけません。どうしても連れて行きたければ、キャリーバッグに入れてください。

そしてさらにその後に、極めつけのダメ飼い主さんが登場。

店に入ってきたのは2人の女性。1人がミニチュアーダックスフンド2頭を連れていたのですが、この犬たちが、料理がテーブルの上に乗せられたときからずっと、吠え続けていました。家ではテーブルの上のものを食べさせているのでしょう。

大合唱で「くれくれくれくれくれ!」と騒いでいます。

タックスは声が大きいので、とても迷惑でした。犬たちに罪はないのですが、非難の目はまず犬たちに注がれ、それから飼い主さんに向けられているようでした。

しつけをしていないこどもよくないのですが、そんな犬たちを連れてさてしまう、飼い主の「人としてのマナー」に問題があるのではないでしょうか。吠えられている飼い主さんに向かって、もう1人の女性が一言。「先輩。犬のしつけ、失敗しちゃったみたいですね!」

あっぱれ後輩!失敗しても、しつけのやり直しはできます。犬は必ず学習してくれるものですから。さちんとトレーニングをするよう、ぜひお願いしたいと思います。