大型犬の飛びつき

飼い主さんのお悩みは、『ターシャ』の飛びつき。

詳しく伺ってみると、すべてのお客さまに飛びつくというわけではなく、飛びつかれる人と飛びつかれない人がいるそうです。

飛びつかれないのは大型犬を飼っている人で、厳しく『NO!』と言うのでターシヤも飛びつかないほうがいいと学習しているのだそうです。私がお宅へ伺ってみると、飛びつかれまくりました。どうしても喜んでしまう、ダメトレーナーです(笑)。

飛びつきに関しては、良いのか悪いのか判断が難しくなる出来事がありました。2008年に行われたJAPDTのカンファレンスで、災害救助犬のデモンストレーションを見たときのことです。犬たちのすばらしいパフォーマンスが成功した後、先生は必ず大げさにほめ、犬たちはうれしそうに前足を先生の体にかけ、なでてもらっていました。

その場面を見て、犬たちが先生をバカにしているように見えた人はひとりもいないでしょう。ただこの場合には、「指示することで必ずやめさせることができる」という条件があります。

飼い主さんの指示に確実に従わせることが必要なので、まずベースプログラムに取り組んでもらいました。

ターシャに飛びつかれたときは腕を組んですばやく背中を向け、陽気なターシャにちゃんと伝わるように、本気かつキレのある動きで拒否するようお願いしました。笑顔も見せてはいけません。

4週間後、私はターシャに会いにいきました。玄関に入ると、ターシャが飛んできましたが私の前まで来て座り、モソモソしながら私の顔を見ています。飼い主さんはオスワリーマテの指示を出し続けています。私も必死で目をそらし、がんばっているターシャを刺激しないようゆっくりと動き、部屋の奥のソファまで移動しました。ターシャはうれしそうにしっぽを振りながら私についてきましたが、私が座るとモジモジしながら隣に座りました。その様子を見届けて、私はターシャに初めて言葉をかけました。

「こんにちは、ターシャ」と静かに声をかけ、ゆっくり2回ほど胸のところをなでてやりました。ターシャはそれで気が済んだようで、くるっと振り返りお気に入りのクッションの上に寝そべりこちらをながめていました。飛びつくのもかわいいですが、そんな風に優雅に振る舞うターシャの姿もとても愛らしいものです。

飛びつきをやめさせるには、飼い主がコントロールできるようトレーニングすることと、対象が他人の場合には、「飛びつかれる人がちゃんと拒否してくれる」という協力も大事です。そうなると、お散歩のときに近づいてくる「自称犬好きさん」は、手ごわい天敵です。

「あら、かわいいわね~」などと言って飛びつかせてくれて、なでたり、優しい声をかけてくれたりして「飛びついたこと」に対してのごほうびをくれるので、犬はそのごほうびが欲しくて行動を繰り返してしまいます。

そんなとき、犬好きさんは必ず「私、犬好きだから大丈夫よ」とおっしゃいますが、それは違います。

大丈夫なわけはありません。そんな学習をさせられて、飼い主さんは困っているのです。私も含めた全国の「犬好き」のみなさま、人なつこくて愛想の良い、かわいいワンちゃんに出会ってしまい、さわりたい衝動にかられてしまったら、必ず飼い主さんに「飛びつかれてもいいですか?」って、聞いてからにしてください。

飼い主さんのがんばりもあり、ターシャの飛びつきは、今ではだいぶ良くなったそうです。100%飛びつかないということではないそうですが、飼い主さんが受け入れられる範囲とのことですから、良かったと言っていいでしょう。